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はじめに

自然とのかかわり方のマニュアルのような物はありませんが、どんなことにでも、最低のルールはあります。まわりの人や鳥、虫や植物にも迷惑をかけないように気をつけて観察しましょう。自然を慈しみ、畏敬の念を持つことが大切だと思いますが、そんな面倒な表現よりも、鳥や花などを、「見せていただく」というような謙虚な気持ちを持てたらいいなと思います。誰もが分かっていることですが、ついつい夢中になってしまうことがあるのです。まわりの自然がどんどん少なくなってきているので、ますます大切にしていかなければなりません。今ある自然といつまでも楽しくかかわるためには、あまり夢中になりすぎて、我を忘れるようなことがないようにしましょう。そのくらいの、一歩引いた気持ちで観察や撮影をした方が、まわりもよく見えて、鳥の方が近寄ってきてくれたり、良い写真が撮れたりすることがあります。

鳥を脅かさないで

種類や個体によって警戒心の強さは違います。その鳥が嫌がる距離を超えると、その鳥はパッと飛んでしまうでしょう。あまり近づき過ぎないように観察しつつ、近づくときは少しずつ進んでください。その時は素速い動きや大きな動きは禁物です。三脚を担ぐときなども、そっと静かに担いでください。そして、同じ個体をずっとねらったり、同じ場所で長時間ねばったりすることはできるだけ避けるようにしましょう。タカ渡りのコースで待ち受けるような場合以外は、気短になってください。

営巣中は細心の注意を

営巣中の親鳥はとても神経質になり、危険を感じるとその巣を放棄してしまうこともあります。不用意に近付きすぎることはもちろん、巣に帰ろうとしている親鳥や、巣立ち直後の雛の観察や撮影は、できるだけ避けるようにしてください。もし行う場合でも、短時間で素早く終わらせて、なるべく早くその場から離れるようにして下さい。鳥の中には個体によって、人間を全く気にしないものもいますが、そういう個体に出会うことは本当にまれです。細心の注意を怠らないようにして下さい。

自然はそのままに

主に撮影する人に見られる行動ですが、観察地で木を切ったり、枝を折ったりする人を見かけたことがあります。つい注意する言葉をかけて、何度か衝突したこともあります。確かに私も、ススキの葉を折り曲げたり、枝をひっぱったりしたことはもちろんあり、きれい事を言える立場ではありませんが、自然はなるべく自然のままで撮影したいと思っています。「ここまでなら許せるのでは…」という許容ラインは、当然人それぞれでしょうが、
多くの人のラインがなるべく近いといいなと思っています。

餌付けのこと

餌付けは、最近ではふつうに行われていて、賛否両論があることは分かっていますが、当然私もその恩恵を受けて撮影している場合があり、何が何でも絶対に反対だとは思ってはいません。撮影や観察目的以外でも意義のある給餌はあると思うし、ツルの越冬地などのように野鳥にはもちろん、観察者や撮影者にもそれぞれプラスになる場合もあります。 
 ですから、餌付けするときは、プラスチック容器などは必ず持ち帰るなど、後かたづけをキチンと行い、与えすぎないように注意し、春になったらやめるなど、周囲やその野鳥のことを一番に考えて欲しいと思います。独りよがりで行わないで、その場の他の人たちと話し合うことも考えて行うようにしてはいかがでしょう。

ストロボの使用や、音声での誘引について

このことも、私は強く言える立場ではありませんが、その鳥の生態などがよく分からない場合は使わないで欲しいと思います。至近距離でのストロボなどの人工照明が、野鳥の目に与える悪影響は容易に想像できます。また、目的の野鳥を呼び寄せるためにテープなどで鳴き声を流す方法は、日本でも随分昔から行われていましたし、外国のウォッチャーの間でもふつうに行われているようです。しかし、一カ所で長くは行わないとか、繁殖の真っ最中は避けるなど、悪影響が出ないように細心の注意を払わなければなりません。。

道をふさがないで

他の人の通行の邪魔にならないかどうかは、常に気をつけるようにしましょう。細い道に三脚を立てたり、太い道でも集団でふさいだりしている場面に出会ったことがあります。これは、車でも言えることで、たとえ、良いチャンスで撮影していても、通行人が来たら撮影をあきらめるのは当然です。農道で撮影していた人が、仕事で通りかかった農家の人に「来るな」と言ったとか、車をどかせなかったという話しを聞いたこともあります。これは言語道断。鳥に集中することは必要ですが、常に回りにも気配りしましょう。

鳥ヤは鳥ヤ同士

先客の前を堂々と通って、目的の野鳥に近付いたり、目的の場所へ移動したりする人がいます。一般の人ならそれも仕方ありませんが、同じ鳥ヤ(野鳥好き)ならちょっと配慮しあいましょう。その場所に先に来ている人が、望遠鏡やカメラをのぞいていたら、少し待って様子を見ましょう。その人がこちらに気づいたり、撮影をやめたりしたら「行っても良いですか?」と声をかけて下さい。また、逆の立場だったら、後ろの人に「どうぞお通り下さい」などと、譲り合って欲しいと思います。お互いに言葉に出さなくても、気配りしあえたら良いなと思います。鳥ヤは鳥ヤ同士、知らない人でも仲良くしましょうよ。

人家や人にはレンズを向けない

街中で撮影していて、そんなつもりはなくても、結果的に人家にカメラを向けてしまったことがあります。カーテンをサッと閉められて、初めて気づいて、あわててそのお宅へお詫びに行きました。野鳥観察・撮影は望遠レンズや双眼鏡を使うので、近隣の人々の生活をのぞき見るような結果になりかねません。レンズを向ける方角には、細心の注意をはらいましょう。
 
※フィールドマナーについて、私がこれまでに感じてきたことや、経験したことなどをあげてみました。これが全てではありませんし、絶対的なものでもありません。ケースバイケースで判断しなければいけないこともあるかと思いますし、これでは全然足りないのかもしれません。初心者もベテランも、みんなが同じように楽しむためには、ある程度の窮屈さも必要だとも思っています。皆さんも一緒に考えてみてください。