季節の扉

オオウメガサソウ

2015年6月30日

オオウメガサソウ

ここ数年、青森県に通い詰めている。本州最北端ということもあって、渡り鳥も多く見られて、飽きることがない。しかも、珍鳥のヒメクイナやシマクイナなど、繁殖がきちんと確認されていない超珍しい鳥が、繁殖期にさえずっているなど、ワクワクすることが多いからだ。
でも、これだけではない、私が最近、特にはまっているのは野草観察。とても地味な感じで、私に似合わないと思われるだろうが、どうしてどうして、これがとても楽しいのだ。6月中旬の青森県内某所(絶対に秘密!)は、ピンク色の絨毯が敷き詰められる。ベニバナイチヤクソウが100メートルくらいの幅で2㎞ほども続く大群落があるのだ。この花が終わる頃には、同じ仲間のウメガサソウと、準絶滅危惧種のオオウメガサソウも咲き乱れる。本当にカワイイ花で、一目見ただけで虜になってしまうのも、納得していただけるだろう。

鮮やかな花に負けない囀り

2015年6月1日


ホオアカ(青森県つがる市)
満開のエゾゼンテイカの花に止まって、気持ち良さそうに囀っている。

 

東北地方以北に咲くエゾゼンテイカ(別名エゾカンゾウ)は、中部山地の高原に咲くゼンテイカ(別名ニッコウキスゲ)と共に、初夏を彩る花の代表になっている。各地の有名な原生花園では、次々にこの花が咲いて一面に黄色くなる時期がある。こんな美しい草原には決まってホオアカが繁殖していて、「チュゥ チィ ツゥ」と囀っては、花園の中で忙しく子育てをしている。普段はさほど良い声だとも思っていないのに、お花畑を吹き渡る爽やかな風の中で聞くと、本当に良い声に聞こえてくるから不思議である。

本格的な春の訪れ

2015年4月1日


ギフチョウ(06年4月 新潟県阿賀町)
オオチョウジザクラの残り少なくなった花に、蜜を吸いにやってきた。


東京より少々遅れてやってくる越後の春。山間にひっそりと咲くオオチョウジザクラの花にギフチョウがやってきた。遠くの山からは気の早いツツドリの「ポポッ、ポポッ、ポポッ……」と鼓を叩く様な鳴き声が聞こえて、近くの崖下に残る雪の下からは、「グッ グッ グッ……」というタゴガエルの鳴き声も聞こえる。のどかな春、いかにも春という雰囲気だ。こんなふうに自然の中で春を感じる瞬間は、地方地方によっていろいろと異なるものだが、私はどこでもいつでもなんだか嬉しくなってしまう。早春にヒバリの囀りを聞いたり、路傍に咲いているオオイヌノフグリやホトケノザを見つけたときもかなり嬉しいが、本格的な春を感じるのはやはり桜と夏鳥。桜が咲いて、夏鳥の姿が見られると、私は決まって毎年ソワソワ、ワクワクしてしまう。

ウチワヤンマ

2014年12月2日


ハスの新葉に止まったウチワヤンマ(本州から九州に生息するヤンマの仲間)。 新潟県

 
野鳥の姿が少なくなる夏には、私は結構、昆虫類の撮影をして楽しんでいる。花盛りのハスの花と鳥の組み合わせでは20種類くらい撮影していて、それはそれで楽しいのだが、合間に昆虫の姿を見つけると、そちらにもついつい夢中になってしまうのだ。
クマバチやトンボ類などの撮影は楽しくて、シオカラトンボやコシアキトンボは随分撮影した。しかし、ギンヤンマやオニヤンマなどのヤンマ類はなかなか良いシャッターチャンスには出会えない難しい部類だ。・・・ン? なんだぁ、子供の頃、捕虫網を振り回して、虫取りに夢中だった頃と全く同じ感覚じゃないか。と、愕然とする。と、まあ、全身汗でびっしょりになりつつ、湖面をスイスイと飛び回るウチワヤンマの撮影に成功! やけに涼しげな風情に、尾にある団扇が役に立っているのだろうかと、私はチョットうらやましく思う。

「夏!」の表現

2014年7月1日


エリグロアジサシ
シャープな美しい姿形で大好きな鳥だが、大変な思いで撮影した1枚

そろそろ、夏本番である。夏のイメージは、青い海と青い空に、白い入道雲という組み合わせが定番で、そんな風景の中に、はじけた水着姿の若い女の子が写っている、という、飲料水系のコマーシャルをよく目にする。手っ取り早く季節感を出せて、イイナアと思う。
野鳥の世界ではこうはいかない。確かに、青い海と空、そして白い入道雲、その中を飛ぶ白い鳥、というのはなかなか絵になると思う。しかし、それを撮影するためには、かなり過酷な条件を克服しなければならない。ま、ちょっと考えて思い浮かぶのは、真夏の南西諸島の海岸線を歩けば撮影できるだろうということ。そう、炎天下での体感温度が50度にもなろうかと思う暑さに耐えられれば、という注釈つきだ。画面では爽やかでも、実際には死にそうになって撮影している。

あけまして、おめでとうございます。

2014年1月2日

ホオジロ
ホオジロ 猛吹雪の中、懸命にススキの穂を採食していた。

 
 毎年、暮れから新年にかけては、新しい一年間にはどこへ何を撮影に行こうかと、あれこれ思い悩みながら計画を立てている。行きたいところはいくらでもあって、そこへ行くべき時期も重なっている場合がほとんどで、その時期には体がいくつかほしいと思うのは毎年のこと。厳選して計画しても、他の都合で泣く泣くあきらめることも多いし、取材先での進路変更は常である。なので、計画しても無駄なような気もするが、悩む過程が結構楽しいし、計画から横道にそれて、思いがけない嬉しい出会いがあることもあって、もしかしたら、そんなことのために計画を立てているのかも知れない。
 数年前に道南で撮影した、このホオジロの写真。雪がほとんどなかった根室から、雪がしんしんと降る景色を見たくなって訪れた道南で、たまたま海沿いの道すがら撮影したものだ。ホオジロしかいなかったのだが、だからこそじっくり待って、思うような写真になって嬉しかった。計画倒れでも、横道でも、遠回りでも、「ま、いいか」の精神は今年も全開にして頑張ろう!

初冬の日差し

2013年12月2日


コジュケイ 上から落ちてきたヌルデの実を採食しに出て来た雌雄。

 
 冬の暖かい日にカメラをかついで歩いていると、「チョッと来い、チョッと来い」と、コジュケイが呼んでくれる。しかし、その気になって鳴き声の方に行ってみても、そこにはもうコジュケイの姿はない。警戒心がとても強い鳥なので、姿を見ることはなかなかできないのだ。結構地味なイメージの鳥だが、よくよく見れば、細かい色模様が美しい、丸みのある体型も愛らしい、良い鳥なのだ。すぐそばから鳴き声が聞こえたとなると、一目でも見たいと、たいていのバードウォッチャーは右往左往する。しかし、こちらが動けば動くほど、その姿を見ることはまずできない。コジュケイ撮影にはひたすら待つという忍耐力が必用だ。この写真は、通い始めて3日目に撮影したものだ。日陰と日向のコントラストが強くなったなと思ったら、いつの間にか射程距離にやって来ていて驚いた。柔らかい日差しが似合っていた。
 この後、このコジュケイは熱心なウォッチャーたちに餌付けされ、観察はもちろん、撮影さえもすごく簡単に誰でもできるようになった。嬉しいけれど、少々トホホな気分であった。

樫の木とカケス

2013年11月1日


カケス シラカシの実を食べた直後に飛び立った。

 
 2006年の秋から今年の初めにかけての冬は、都心でも見かけるほどカケスの姿がよく目に付いた。カラスの仲間にしては美しい羽を持っているので、鳴きさえしなければ結構人気の高い鳥なのだが、いかんせん警戒心が強く、そうじっくりとは見られないのが普通である。それが、全シーズンはやけに目について、遠出しないときの何日間かは、私はカケスの撮影に専念した。
 コナラの木が多いところにねらいを定めて、数日通い詰め、なんとか撮影することができて大喜びした。しかし、カケスという名前の語源にもなっているカシの実を食べる様子も撮影したいと、はたと思いついた。カケスはカシの木に棲むと言われ、樫鳥とも呼ばれていたというのだから、こちらにもきっと姿を現すに違いないと、ねらいを定めてカシの木に日参した。数日間通い、ついに撮影でき、その中の一枚がこの写真。アップではないが、ナラではなくカシの木から飛び出した瞬間である。私的にはかなりご満悦なのだが、人には説明しないと分かってもらえないのがちょっと寂しい。

秋の訪れ

2013年10月22日


メジロ モクセイの蜜を吸いにやって来た。

 
 朝鮮半島で繁殖するアカハラダカの渡りが始まるのは9月上旬から。長崎県対馬を経由して、南西諸島を南下する。対馬では、一日に数万羽ものアカハラダカが上空を通過する姿を見られる日があると言う。私はまだその時期の対馬は訪れていないが、さぞかし壮観なことだろう、是非一度見たいものだと思っている。
 メジロは甘いものが大好きで、春先にはウメやサクラ、ツバキなどの花蜜を吸っているのをよく見かける。そしてこれらの、花蜜が多い花が終わる頃になると、メジロは繁殖に入る。子育てにはもっぱら昆虫類などの動物質を摂るので、甘いものは一時休止。その後、子育てが終わり、秋風が吹く頃になると、いろいろな木の実のシーズンになり、メジロも動物質から植物質のものを中心に採食するようになる。甘い木の実も好物だが、特に甘くなるカキやムクノキが熟すまでにはまだ日があるようだ。しかし良くしたもので、ちゃんと良い花が咲く。モクセイが甘い香りのする小さな花を咲かせるのだ。細い嘴と長い舌を持つメジロには、最高の秋の味覚だ。爽やかな風に乗ってある朝突然に漂ってくるモクセイの甘い香りで、私たちも秋の訪れを知る。

タカ渡りシーズン始まる

2013年9月5日


アカハラダカ(石垣島於茂登岳)カメラを持って待ちかまえている私の上空を、300羽ほどの群れが旋回しながら、西へ向かって飛んで行った。

 
 朝鮮半島で繁殖するアカハラダカの渡りが始まるのは9月上旬から。長崎県対馬を経由して、南西諸島を南下する。対馬では、一日に数万羽ものアカハラダカが上空を通過する姿を見られる日があると言う。私はまだその時期の対馬は訪れていないが、さぞかし壮観なことだろう、是非一度見たいものだと思っている。
 対馬を出たアカハラダカは南下して、奄美大島や沖縄本島、宮古島、石垣島などを経由しているが、これらの島では対馬ほどの数は観察されていないと聞く。私も南西諸島へは何度も出かけているが、見ることができたアカハラダカの数はせいぜい千羽ほどだ。数万羽のアカハラダカは、いったいどこをどういうふうに渡っているのだろう。不思議なことがまだまだたくさんある。

ウチワヤンマ

2013年8月28日


ハスの新葉に止まったウチワヤンマ(本州から九州に生息するヤンマの仲間)。 新潟県

 
野鳥の姿が少なくなる夏には、私は結構、昆虫類の撮影をして楽しんでいる。花盛りのハスの花と鳥の組み合わせでは20種類くらい撮影していて、それはそれで楽しいのだが、合間に昆虫の姿を見つけると、そちらにもついつい夢中になってしまうのだ。
 クマバチやトンボ類などの撮影は楽しくて、シオカラトンボやコシアキトンボは随分撮影した。しかし、ギンヤンマやオニヤンマなどのヤンマ類はなかなか良いシャッターチャンスには出会えない難しい部類だ。・・・ン? なんだぁ、子供の頃、捕虫網を振り回して、虫取りに夢中だった頃と全く同じ感覚じゃないか。と、愕然とする。と、まあ、全身汗でびっしょりになりつつ、湖面をスイスイと飛び回るウチワヤンマの撮影に成功! やけに涼しげな風情に、尾にある団扇が役に立っているのだろうかと、私はチョットうらやましく思う。

本格的な春の訪れ

2013年4月2日


ギフチョウ(06年4月 新潟県阿賀町)
オオチョウジザクラの残り少なくなった花に、蜜を吸いにやってきた。
 
 東京より少々遅れてやってくる越後の春。山間にひっそりと咲くオオチョウジザクラの花にギフチョウがやってきた。遠くの山からは気の早いツツドリの「ポポッ、ポポッ、ポポッ……」と鼓を叩く様な鳴き声が聞こえて、近くの崖下に残る雪の下からは、「グッ グッ グッ……」というタゴガエルの鳴き声も聞こえる。のどかな春、いかにも春という雰囲気だ。こんなふうに自然の中で春を感じる瞬間は、地方地方によっていろいろと異なるものだが、私はどこでもいつでもなんだか嬉しくなってしまう。早春にヒバリの囀りを聞いたり、路傍に咲いているオオイヌノフグリやホトケノザを見つけたときもかなり嬉しいが、本格的な春を感じるのはやはり桜と夏鳥。桜が咲いて、夏鳥の姿が見られると、私は決まって毎年ソワソワ、ワクワクしてしまう。

アイドルはやはりカワセミ類

2013年3月2日


ヤマショウビン(長崎県対馬市 5月)
クヌギ林で休んでいる。見つけると、やはり息をのむほど美しいが、自然の中では案外目立たない。

 

以前のバードフォトグラファーは、当然のようにバードウォッチャーでもあったが、最近はバードウォッチャーではないバードフォトグラファーが増えている。こういうバードフォトグラファーの多くは、カワセミに夢中。カワセミさえいればどこにでも張り付いていて、撮影に余念がない。そして、1〜2年間もカワセミを撮影すると、次は決まってヤマセミはどこ?となる。しかしヤマセミは、簡単には撮影させてくれない。それでもなんとか撮影できると、次はアカショウビンだ。これはこれでなかなか手強いが、近年の情報網の詳しさや早さは素晴らしくて、アカショウビンが営巣している場所の前は、あっという間にカメラマンでいっぱいになる。アカショウビンのストレスのことを考えると、お気の毒様にと思うばかりで、私もバードフォトグラファーなのでそうそう意見も言えない。

カワセミの仲間はやはり魅力的な鳥ばかりなので、いくらでも撮影したくなるのだ。そして、最後はやはりヤマショウビンをねらいたくなる。だが、この鳥はそう簡単には撮影が出来ない。それでも長崎県対馬市に行けば、出会える確率はかなり高い。それも5月3日限定。この日はなぜか決まっているように、ヤマショウビンの出現日だ。

鶯(うぐいす)色のメジロ

2013年2月1日


カワヅザクラの花蜜を吸うメジロ。(02年2月14日 静岡県河津町)

冬期から咲くツバキ科やバラ科の花に、甘いものが大好きなメジロは花蜜を吸うためによくやってくる。早咲きのウメの花にもメジロの姿がよく見られたことから、昔からウグイスと間違われてきた。そして、メジロの色の名前は鶯色となってしまったようなのだ。甘い物好きの私は逆に、メジロ色の鶯餅などを見ると、メジロの悲哀を感じる。
 静岡県河津町には、2月の上旬頃から咲き出す早咲きのサクラが咲く、その名もカワヅザクラ。河津町近郊にはどこにでも植栽されていて、伊豆半島に入ると海岸沿いの道に植えられたカワヅザクラがあちこちで咲いている。そして、たいていの木にメジロが来ていて、美味しそうに花蜜を吸っている。ここ数年の、私のお気に入りのメジロ観察地は河津町になってしまった。カワヅザクラの色とメジロの色が、何ともいえぬ調和をなしていて、魅せられてしまうのだ。出店で売っている、メジロ色の鶯餅にも魅せられている。

樫の木とカケス

2012年10月29日


シラカシの実を食べた直後に飛び立った。

2006年の秋から今年の初めにかけての冬は、都心でも見かけるほどカケスの姿がよく目に付いた。カラスの仲間にしては美しい羽を持っているので、鳴きさえしなければ結構人気の高い鳥なのだが、いかんせん警戒心が強く、そうじっくりとは見られないのが普通である。それが、全シーズンはやけに目について、遠出しないときの何日間かは、私はカケスの撮影に専念した。
コナラの木が多いところにねらいを定めて、数日通い詰め、なんとか撮影することができて大喜びした。しかし、カケスという名前の語源にもなっているカシの実を食べる様子も撮影したいと、はたと思いついた。カケスはカシの木に棲むと言われ、樫鳥とも呼ばれていたというのだから、こちらにもきっと姿を現すに違いないと、ねらいを定めてカシの木に日参した。数日間通い、ついに撮影でき、その中の一枚がこの写真。アップではないが、ナラではなくカシの木から飛び出した瞬間である。私的にはかなりご満悦なのだが、人には説明しないと分かってもらえないのがちょっと寂しい。

ソワソワする季節になりました。

2012年10月16日


東京近郊のシジュウカラは、4月の初旬にはほとんどが営巣に入る。イヌシデの雄花が咲いている小枝では、営巣場所が近いのか、雄が縄張りを守ろうと一生懸命囀っていた。

街路樹のこずえから「ツピ、ツピ、ツピ ツツピィー、ツツピィー」という、鳥の鳴き声が聞こえてくるようになりました。これはシジュウカラの囀りです。また、街路樹の根元に、小さな白い五弁の花が咲いていました。これは、春の七草にもなっているコハコベ(通称ハコベ)です。小鳥の鳴き声や、道ばたの草花から春を感じる季節になりました。なんとなくソワソワする季節です。
自然観察は、通勤や通学、買い物の行き帰りなど、ちょっとした時間だけでも、どこででもできます。忙しい毎日ですが、目線を少し上にむけたり、足もとを見たりして、自然を感じる心の余裕をもてると良いなと思います。

会員様はこちら
キムラっち「観察会ツアーのおとぼけウォッチ」
日帰り観察会のご案内
叶内拓哉と行く!バードウォッチングツアーのご案内
後援のご依頼や写真の貸し出し承ります
日本旅行・東京予約センターへ
KOWA PROMINAR・オフィシャルウェブサイトへ