2022.05.27

戸隠高原バードウォッチング

2022年5月22日~23日

数年ぶりに戸隠高原への鳥観察ツアーを行いました。ご参加の皆様大変お疲れ様でした。またご参加いただき感謝申し上げます。ありがとうございました。直前の天気予報ではあまり天気が良くないと報じられていて心配していましたが当日は好天に恵まれ青空も広がってきたので、嬉しくなりました。JR長野駅集合の後バスで1時間ほどかけて戸隠高原へ向かいます。この日は善光寺の御開帳の時期と重なっていて、交通渋滞もあるかと思っていましたが、駅周辺でもそれほどの交通量もなく、予定通りの時間でホテルに到着しました。バスを降りて、目の前に広がる戸隠連山の雄大な景色を眺め、高原というだけあってヒンヤリとして澄んだ空気を実感することができました。

先ずは荷物を降ろして周辺観察へ。スキー場のふもとに建つホテルの周辺はシーズンオフということもあって人影もなく静まり返っていましたが、めぼしい鳥もなかなか見つかりませんでした。それでもホテル周辺で営巣しているというジョウビタキや近くの木の梢に止まってしきりにさえずっているホオジロを撮影することができました。戸隠高原で見るホオジロは背景の景色と相まって、より気高くて美しいものに思えました。

戸隠そばの昼食をとっていよいよ戸隠植物園へ。この日は確かに日曜日ということはありましたが、それにしてもものすごい混雑ぶりで、入り口付近にある駐車場はすべて埋まっていて、道にはみ出して駐車している車もあり、バスが折り返す場所に苦労するほどでした。やはりこれもコロナショックの反動なのでしょうか?
例年のパターン通り植物園入り口からみどりが池を経て戸隠の湿原へ進みましたが、進むにつれどうも周りの様子が以前と違うことに気づきました。以前は林の中を整備された木道を歩きながら「入口広場」と言われる場所へスムーズに行けましたが、木道がなくなっていて地面に直接敷かれた木の板や石板の上を歩くしかなく、下がぬかるんでいることもあって足元がやや不安定な状況でした。もし雨が降った後だとこれは結構厄介だなと感じました。ところが、ドラマのセリフじゃありませんが、この後さらに驚愕の事実が判明しました。湿原の「入口広場」にあった公衆トイレが建物ごと無くなっていたのです。
おまけにロープが引かれて建物があった場所へ行くことすらできない状況に2度ビックリしました。さらに言えば園内の数少ないトイレがなくなってしまったわけで、トイレを使うためには植物園入り口か奥社の入り口まで行くしかないことになり、利用者としては相当な不便を強いられることになります。正直なところ、私もこれにはしばしボーゼンとしてしまいました。あきれていても仕方ないので皆さんとこの状況を確認し、気を取り直して湿原探鳥に出かけることにしましたが、以前は通行できた湿原にも通行止めの箇所がいくつか設定されていました。あくまでも私個人の感想ですが、戸隠はすっかり変わってしまった、というのが率直な印象です。

湿原のなかの木道は一部新しくなっており、地域のガンバリを垣間見た気がしましたが、水芭蕉の近くにあった休憩所や奥社近くにあった休憩用の椅子もなくなっていて、昔と比べて全体的にさびれてしまったように感じて、もの悲しい気持ちになりました。木道に沿って全員でゆっくりと湿原を一周してみましたが、これといった収穫もなく、何よりまず鳥の鳴き声そのものが少ない印象でした。
コルリはもちろん、いつもはそこかしこでやかましいほど大きな声で囀っていたミソサザイすら私の耳にはほとんど聞こえてきませんでした。それでもキビタキやコガラが出てきてくれたり、奥社参道の近くで素早く動き回るキバシリが何度も姿を見せてくれたり、更には毎年ここ戸隠でヒナを育てるというオオアカゲラは健在でしたからなんとか野鳥の宝庫、戸隠の面目を保ってくれたようでした。

収穫がない中で歩き回るのは一層シンドク感じてしまいます。夕方5時ころホテルに帰ってからは、さすがに私は疲れてしまって、しばらく動くことも億劫でしたが、なんとか風呂に入って温まり、元気を取り戻して夕食会場へ。夕食後、実は私も想像していなかったのですが、久しぶりに叶内先生の講義を拝聴することができました。
戸隠もそうですが、日本全体どころか世界規模で鳥の数が激減しているとのお話しを聞き、今日の戸隠の寂しい状況を考えると今後どうなってしまうのか、いずれ鳥たちの復活はあるのか気持ちは沈みがちになりますが、とにかく明日の早朝探鳥に期待して早々に寝ることにしました。

朝の5時に戸隠奥社へ。さ、さ、寒い~ったらありゃしない。高原の早朝の寒さを甘く見ていました。歩いていても辛くなるほどの寒さです。指先がかじかんでしまうような状態です。平日の早朝というのにすでに先客もチラホラ見えましたが、そんなことはどうでもよく、この状況で鳥もいないのではさすがに辛いと思っていたら、昨日は全く会えなかったミソサザイを木道脇の杭の上に見ることができました。よかったー。その後もコサメビタキやサンショウクイを見つけたり、オオアカゲラの撮影もできて、ようやくエンジンがかかって来た感じでした。

ホテルへ戻って朝食をいただき、チェックアウトして再度奥社へ。幾分寒さも和らいだ中で、奥社参道脇の枯れ木に営巣しているキバシリを観察して、その後は「入口広場」を中心に木道を回りながら、皆さんはノジコを何とか見つけようとトライしていました。例年ならそれほど珍しくもないノジコを今回はなかなか発見することができません。ようやく声を頼りに探してみても見つけた瞬間すぐに逃げていってしまいます。
私はというと、何といっても戸隠のスーパースターであるオオアカゲラのオスを何とかゲットしたいと狙っていました。メスは撮影できたのですが、「入口広場」近くの枯れ木に作った巣にやってくるオスはまだカメラで捉えるに至っていませんでした。

昼食のためいったんホテルへ戻ってから、荷物をバスに積み込んで再度植物園へ。高台のお花畑で今が見ごろの美しいサンカヨウやトガクシショウマやアズマシャクナゲを見た後は、緩やかな坂を下って湿原の木道におりてみんな揃って歩きました。その後皆さんはそれぞれお目当ての鳥を探して散策していただきましたが、私はとにかくオオアカゲラに集中することにしました。営巣している木を見つめて親の帰りを狙っていると「キョッ!キョッ!」というオオアカゲラの鳴き声が近づいてきます。しかし簡単には現れてくれません。巣立ちが近いと給餌の頻度は少なくなるそうで、なかなかチャンスを掴むのは大変そうです。しかし待つこと数十分、遂にオスがやってきました、周りの人の「来たっ!」という声に即座に反応してカメラを枯れ木に向けて何とかオオアカゲラのオスを撮影することができました。

今回のツアーで見た戸隠湿原の環境はいままでと明らかに違っていましたが、ゴジュウカラは以前と同じく「入口広場」近くのいつもの木に営巣していましたし、クロツグミも姿をちらっと見せてくれましたし、オオアカゲラは今年もヒナの巣立ちを迎えていました。変わっていく戸隠の自然に確かに寂しさを覚えましたが、一方でこの環境がいつまでも鳥たちのために続いていき、いつか昔のようにあちこちに鳥の気配が感じられる世界に戻るよう願っています。

ホオジロ

キバシリ

ミソサザイ

ニュウナイスズメ

キバシリ

サンショウクイ

ノジコ

オオアカゲラ♂

ミソサザイ

オオアカゲラのヒナ

オオアカゲラ♂

オオアカゲラ♂

オオアカゲラ♀

オオアカゲラ♀

フデリンドウ

ミズバショウ

ニリンソウ