第4回 壊れてしまったアオバズクの巣

2008.06.15

青葉のころに姿を見せるフクロウ類だからとか、体羽の色が青みを帯びているからだとか、アオバズクという名前のいわれは幾つかあるようだ。最初のいわれのいうとおり、夏鳥であるアオバズクは本当に青葉のころに姿を現わす。実際に、葉の茂った木の枝に止まっていると、青葉にまぎれてなかなか見つけにくい鳥である。

アオバズクにかぎらずフクロウ類は、あまり野鳥に関心のない人でも何か引きつけられるものがあるらしく、根強いファンが多い鳥である。しかし、なかなか姿を目にすることはできず、都市部でもけっこう繁殖していたアオバズクの姿も、近年では残念ながら極端に少なくなってしまったようだ。

●絵になるアオバズクの巣
数年前の6月下旬、東京都八王子市郊外の神社に、アオバズクを見に行った。その神社の太いサクラの木にアオバズクが繁殖していて、私は前年や前々年にも何度か訪れて愛らしい親子を撮影していた。アオバズクは毎年同じ巣で繁殖するので、見つけるのはそう難しくはなかった。たぶん雄であろう個体を確認すると、「やあ、今年も来たね。がんがれよ」と思わず声をかけたくなってしまう。

大きなサクラの木の太い横枝の幹近くに、斜め上に向かって出ているもう1本の枝が、ほとんど根元から折れている。そしてそこから下の横枝にかけて、横長の穴が開いている。穴が開いたのはもうずいぶん前だったようで、そこがアオバズクのかっこうの巣になっているのだ。穴の左側と上部にはシノブ(シダ類)が生えていて、枝や幹にはところどころにコケもついていた。木肌にそれらの緑がよく映えて、とても美しい絵になる巣だ。

アオバズクの繁殖は東京近郊でも何か所かで確認していたが、どこも木が切られてしまったり、周囲が開発されてしまったりで、撮影できる所はほとんどなくなってしまった。だから撮影しやすいうえに、絵になる巣を見つけたときには本当にうれしかった。しかし、これまではほかの取材と重なっていたこともあって、ここでは自分の納得できる写真は撮れていない。私の家からも近い所なので、今年こそはとかなり気合いを入れて出かけた。

前年までは、巣立ち間近になるとヒナは巣の出入りにちょうどいい下の太い横枝に並んでいた。そして、その苔むした横枝を伝ってやって来る親鳥から餌をもらったり、緑鮮やかなシノブが生えている枝の上の方までよちよちと登って行き、翼をばたばたさせてはばたく練習をしたりしていた。

鳥居の下に陣取ってカメラを構えている私には知らん顔で、自分のすぐ前を飛ぶ虫を首を傾けて見ていたり、ぼやぼやの産毛が残っている頭を目を細めてかいている様子は本当にかわいらしくて、何時間見ていてもあきないくらいだった。

●巣がない!
シーズン2回目、私はうきうきしながら出かけて、少しどきどきしながら車を降りた。そして、アオバズクの巣を見上げた。「えーっ!?巣がない!な、何で?」。

いったいどうしたことだろう。巣のあった枝が付け根からすっかり折れてしまっていた。先日、神主さんのお宅にもごあいさつしたし、例年のように親があまり警戒しないようなら少しずつ撮影を始めようかと、夕食用の弁当も持参してきたのに………。

気を取り直してよく見てみると、サクラの木の下の休憩所の屋根の上とその周りに、折れた枝の残骸が落ちていた。巣は文字どおり跡形もなく、アオバズクの姿も見当たらない。「ああ、ここもか」と、私はすっかり力が抜けてしまった。

神主さんのお宅にうかがって奥様に聞いてみると、例年になく早く上陸したついこの間の台風による強風で枝が折れて巣がだめになり、まだ小さかったヒナは死んでいたそうである。私は本当に残念で、またヒナたちがかわいそうで、親鳥はどうしただろうと思うと長い間その場を立ち去ることができなかった。あきらめきれずに周辺を歩いてアオバズクの姿を探したが、姿はおろか声さえも聞くことができなかった。
その後、私はこの神社には出向いておらず、あんなにきれいな巣もいまだに見たことがない。今年は気を取り直して、久しぶりに様子を見に行ってみようと思っている。アオバズクの繁殖によさそうな穴が開いている木は、サクラ以外にもけっこうあったのだから、もしかしたらどこかで繁殖しているかもしれないから。

“バードウォッチングマガジン「BIRDER」(文一総合出版)に1994年4月号から、9回にわたって連載していたものです。”

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